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                       ー降臨ー

 

 失業した。

8年間勤めた会社が倒産し、何もかもを失った。職はもちろん、付き合っていた彼氏も離れていった。全てに欲がなくなり、失望感だけが残っていた。生きる希望もなく、取り敢えずの職探しをネットで検索しつつ、そんな時に何気ない好奇心で見つけた出会い系サイトに登録をした。寂しさを紛らわすつもりだった。

 

 ■jack 

 ■178×68×28凸、最近始めてみました。よろしくお願いします。

何の色気もないプロフィールに携帯で自分撮りした冴えない画像を載せた。暫く閲覧していると何通かメッセージが届いた。

 

 「はじめまして、よかったらメッセしませんか?」

画像とプロフィールを確認した。

 

 ■AKIRA

 ■160×55×23凹回。がっちりです!

 ■同じように鍛えている人がタイプです!よろしく!

顔画像はなく、鍛え上げた上半身と逞しい太腿から脹脛の画像のみが載せられていた。次のメッセージを確認した。

 

 「はじめまして!」

 

 ■よーいち

 ■180×79×20凹。ややガチムチ気味w

 ■年上好きの甘えたがりです。彼氏になってくれる人が欲しいー!仲良くしてください!

その後、いくつかののメッセージを見て気になった3人に返信を送った。暫くして一通の返信が届いた。

 

 「返信ありがとうございます!是非リアルしたいです!」

二番目にメッセージをもらった【よーいち】だった。20歳らしい返信にとりあえず、

 

 「是非、リアルしましょう!」

と返信を【よーいち】に送った。その後に今度は最初にメッセージをもらった【AKIRA】からの返信が届いた。

 

 「ども!」

一言メッセージに何と返していいものか考えていると、【よーいち】の返信が届いてしまった。

 

 「なんて呼んだらいいですか?いつどこで会います?」

まずは【よーいち】に会おうと決め返信を考えた。

 

 「こうたっていいます。明日は?待ち合わせなんだけど東京駅の丸の内側地下改札って分かります?」

相手の出方を探ってみた。

 

 「何となく分かりますよ〜!何時にしますか?」

若いけど、意外と合わせてくれるタイプと感じた。

 

 「じゃあ、東京駅に13時に待ち合わせて取り敢えずランチでもしよう!」

ありきたりだがやはりまずは食事の約束のみにした。

 

 「はい、会うの楽しみです。」

こうして約束をして【よーいち】とのメッセージを終えた。【AKIRA】とのメッセージはまた後日にしようと返信はしないでいた。

 

 

 

 

悪魔の紙切

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