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                                          ー降臨ー

 

 

 翌朝、早くに目が覚めてしまった。久しぶりの高鳴る気持ちが押さえられずにいた。

 

 着替えに1時間近くかかったのは久しぶりだった。何を着て行くかをこれほど悩むとは思わなかった。初めて会うのに、やはり第一印象が重要なのは普通の男女でもこっちの世界でも同じ。少しでも自分を良く見せるための最終チェックでもあるからだ。鏡を何度も見直しては修正をひたすら繰り返していた。やっと決まった服装に髪をセットし家を出た。

 早る気持ちと裏腹に、引き返したくなる衝動にも襲われながら待ち合わせの東京駅丸の内側改札前に到着した。時間まで後10分になっていた。スマホを取り出し、【よーいち】へ着いたことをメッセージに残した。暫くすると【よーいち】からメッセージが届いた。

 

 「ごめんなさい、10分程遅れますm(_ _)m」

よくある返事に、

 

 「了解です。着いたらメッセージください。」

とだけメッセージを送った。少し安堵した。待ち合わせ時間すぐに会う気持ちの整理が出来ていなかったからだ。良くない悪い癖である。暫く近くのカフェで時間を潰すことにした。トータル20分のフリータイムでどこまで落ち着きを取り戻せるかが課題だ。取り敢えずコーヒーで気分を落ち着かせ、気を紛らわせた。10分が過ぎ、15分が過ぎたころ【よーいち】からメッセージが届いた。

 

 「あと5分で東京駅に着きます!」

いよいよだ。

 

 「こちらも待ち合わせ場所に向かいますね!」

メッセージを送りながら店を出た。一歩一歩の足取りがやや重い。そうしているうちにも待ち合わせの場所に着いてしまった。ちょうど5分が経っていた。スマホをチェックしながも改札付近もチェックする。ふと目に入った大柄な男と目が合った。

 【よーいち】だ。

悪魔の紙切

つづく
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